歴史ある店舗を再構築。浅草に“文化を育む拠点”を創出
浅草の商店街に立つ築39年のビルが「日本の食文化を伝える拠点」として生まれ変わりました。もとは洋品店だった建物を、江戸時代から続く老舗漬物店のK社が27年前に購入し、1階を改装して営業してきたものです。
しかし老朽化や人材確保の難しさから、継続に課題がありました。そんな中、社長が始めた採用活動をきっかけに新たな仲間が集まり「ここで文化を紡ぎたい」という想いが芽生え、リノベーション計画が始動。
耐震・防火など厳しい条件を一つひとつクリアしながら、1階は物販、2階は飲食、3階は文化体験の場へと再構築。安全性と快適性を両立し、江戸の美意識と現代の感性が調和する、浅草の新しい文化拠点が誕生しました。
リフォーム・リノベーション事例概要
東京都・河村屋
◼︎築年数/39年
◼︎建物のタイプ/ビル(3階建て)
◼︎リフォーム面積/160.00㎡
◼︎リフォーム箇所/1階:物販 2階:飲食 3階:文化体験
◼︎工期/3ヶ月
◼︎施工費用/9,000万円
物販空間の刷新と江戸の美意識の導入
Before
After
築年数を感じさせていた1階は、照明をLEDに更新し、商品が美しく映える光環境に。動線を見直し、什器を最適に配置することで、自然に回遊できるレイアウトを実現しました。
デザインは「文化が波紋のように広がっていく」イメージで構成。カウンターは不整形にデザインし、漬物文化を多角的に発信する世界観を表現しています。
江戸文化を想起させるしつらえを随所に取り入れることで、単なる物販ではなく“文化を伝える空間”へ。来店客が自然と足を止め、漬物や発酵食品を日本の食文化として再認識できる場となりました。
街とつながる小上がりテラスのある飲食空間
Before
After
カフェとして営業する2階は、カウンター席、小上がり席、テーブル席をバランスよく配置し、幅広い利用スタイルに対応。奥には厨房とパントリーを備え、効率的な動線計画を実現しました。
特に商店街のアーケードに面した小上がり席は、屋内と屋外のあいだのような“半屋外空間”として設計。大きく開け放てる窓を採用し、外観に調和する窓枠を選びながら法的基準もクリアしました。
浅草の街並みや祭りを眺めながら食事を楽しめる、地域と一体化した空間です。
素材の風合いを生かした特別な文化体験フロア
Before
After
3階は「文化体験」をテーマにしたワークショップスペースに改装。大谷石や木材など自然素材を随所に取り入れ、重厚感と温もりを兼ね備えた空間に仕上げました。
ここでは漬物づくりや米麹教室などを実施できるほか、将来的にはプロジェクションマッピングを用いた没入型体験も計画。江戸文化を現代的に発信し、観光と交流をつなぐ新しい拠点としての役割を担います。
お客様の声
改装を考えたきっかけ
「浅草店は築39年を迎え、耐震や内装の老朽化が進み、大規模な改修が必要になっていました。コロナ禍でお客様層も変化し、発酵食品や日本酒への関心が高まる中、“売るだけでなく文化を伝える場にしたい”と考えるようになりました。1階から3階までを通じて、漬物や発酵食品、日本酒を『見る・買う』から『つくる・味わう』へとつなげる体験型の場にすることを目指しました。」
リノベーションハイムを選んだ理由
「文化発信の場づくりに共感し、柔軟に提案してくれたのがリノベーションハイムさんでした。避難経路や法規制への対応を逆転の発想で解決し、格子での空間仕切りや和素材の選定にも寄り添ってくれました。職人さんとの連携も丁寧で、信頼できました。」
完成して感じていること
「“こうしたい”という思いを丁寧に形にしてくれたことに感謝しています。3階は今後、プロジェクションマッピングなどの映像演出で、日本文化やアートを発信する空間にしていく予定ですが、そうした構想にもきめ細かく対応してくれました。構想段階から細やかに対応いただき、今回お願いして本当に良かったと思っています。」
ギャラリー

1階物販
冷蔵ショーケースや棚、カウンター、パネルを組み合わせた陳列により、立体感あるディスプレイを演出。
Before
After
1階物販
カウンターを中心に、室内ベンチやスタンドスペース、屋外ベンチを組み合わせ、多彩な過ごし方に対応しています。きゅうりの浅漬けなど気軽に楽しめる軽食も魅力のひとつ。
Before
After
2階小上がり席
屋内でありながら外とつながる“半屋外空間”。窓には竹製の簾を設け、やわらかな光を取り込みながら、浅草らしい街並みを感じられる仕様としています。

3階
「砂や石、木など自然のものを使いたい」というご要望に応え、自然素材を随所にあしらいました。壁面に大谷石を貼ったスペースはアート作品などの展示もできるようデザインしました。
Before
After
黒い外壁と木製建具が調和する外観。大きな木製看板と赤い和傘が街並みに映え、商店街を行き交う人々を自然に招き入れます。
柳井 精一
チーフリフォームコンサルタント
2000年に入社し、一級建築士の資格を取得して以来、24年間で1000件以上のリフォームに携わってきました。生活提案型リフォームや大型リノベーションを得意とし、セミナー講師としても活動しています。趣味は旅、ゴルフ、そしてサウナで、常にリフレッシュしながらお客様に最適な提案を心掛けています。
